現: 2007-03-27 (火) 13:46:33 ゲスト [3] | |||
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+ | さて、決勝当日。 | ||
+ | 毎度のことだが、まずはオフィシャル(的)ミーティング。~ | ||
+ | コース長の谷津さん、パドック長の菊地さん、そして全体をコントロールしてくれるDAIちゃん。~ | ||
+ | あ、それと各ポストのマーシャル達。 | ||
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+ | 今回のレースについて、あらためて説明をしていく。~ | ||
+ | まずは、安全第一。それが基本です。~ | ||
+ | これが守られない場合は、レギュレーションがどうのとか言っている場合ではない。~ | ||
+ | レースの結果と安全とのどちらを優先にした行動なのか?これをみてもらう。 | ||
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+ | 週間天気予報は、この日を雨にしたり晴れにしたり悩ませていた。~ | ||
+ | 当日になってのピンポイント予報は、もっと悩ましい。~ | ||
+ | 18:00から雨の予報。~ | ||
+ | もし、これが本当なら、レース終盤で大変な事になりそうだ。 | ||
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+ | 放送関係の設営は、先週のレース実況のままだったので問題はなかった。~ | ||
+ | が、やっぱり忙しいのは事実で、細かい確認やら自分のチームのことなどなかなか目がいかない。~ | ||
+ | その点、チームのみんなは良くやってくれている。~ | ||
+ | ドライバーは、毎年恒例の尊師杉山とカリスマ溶接師春名、それとKSDP塗り職人岩崎が~ | ||
+ | つとめる。~ | ||
+ | ウチのチーム監督は、人選にはやたらと厳しく、ただ速いだけのドライバーでは納得しない。~ | ||
+ | チームとはいえ、ドライバーは走りだけではダメなのだ。~ | ||
+ | マシンの状況はもちろん、他のドライバーのスティントではピット要員もする。~ | ||
+ | そのためには、必要な準備を的確に理解して、確実に行動してもらう必要があるのだ。~ | ||
+ | 遠慮がちでも困るし、かといって図々しいのも困る。 | ||
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+ | コースインの時にピット出口で車検シールを貼るのも私の仕事。~ | ||
+ | 今年は、パドックでの事前チェックができなかったのだ。~ | ||
+ | タイムアタックが始まるが、昨日のスピードがない。~ | ||
+ | タワーで喋っていながら心配になってくる。~ | ||
+ | 実際に乗ってみると、なんかフレームの反応が今ひとつ。~ | ||
+ | そして、回転数もやはり予定よりほんの少し低いのだ。~ | ||
+ | 4秒台のタイムしか出ず、4番手の位置にいる。~ | ||
+ | 監督には「なんとか3秒に入れて欲しい」と言われる。~ | ||
+ | ここでウェイトセッティングを変えるかどうか、そしてタイアセッティングを変えるかどうか悩む。~ | ||
+ | 尊師杉山は「悩んだときには、攻める方向で行く」と言われるが、~ | ||
+ | セッション終了間際に、その時にドライブしていた岩崎が3秒台に入れる。~ | ||
+ | なおさら悩んだのだが、そのままで行くことにした。~ | ||
+ | これより回転数を上げるとなると、去年と同じウェイトセットになってしまうのだ。 | ||
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+ | 決勝のスタートは、いつものように尊師杉山に任せる。~ | ||
+ | 無駄なバトルに巻き込まれることなく、SUGOを安定して周回して欲しいからだ。~ | ||
+ | 2番目には岩崎を出すことにしている。~ | ||
+ | 第2スティントは給油があるのだが、それまで私はタワーにいるからである。~ | ||
+ | 私のスティントには、変なピットワークを入れたくないのだ。~ | ||
+ | また、3スティント目になると、マシンの変調も出てきやすい。~ | ||
+ | これを感じるのは、やはりマシンオーナーでしか難しいのだ。 | ||
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+ | レースは定刻スタート。が、ここに例のGXがいない。~ | ||
+ | タイムアタックでマシン不調となり、ピットスタートとなってしまったのである。 | ||
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+ | スタート時点を切る各マシン。~ | ||
+ | 尊師杉山は3位をキープするも、1台にかわされ4位になってからは~ | ||
+ | 前方のハイランド組3台から徐々に離れていく。~ | ||
+ | そして、5番手はこちらも離れていく。尊師のタイムはなかなか上がらない。~ | ||
+ | リアタイアだけ旧型を履いている影響はどうなのか?~ | ||
+ | 尊師は手振りでリアタイアの交換を指示してくる。~ | ||
+ | 次のピットインでは、9リットルの給油と、タイア交換が必要となった。~ | ||
+ | タイア交換は、思ったより早く済み、給油の時間の方がかかってしまう。 | ||
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+ | 岩崎がコースインして、しばらくはタイムが上がる。~ | ||
+ | しかしスティント終盤、タイムにバラツキが出始め岩崎はタンクのあたりを気にしている。~ | ||
+ | 加速不良のようなのだ。これは困った。~ | ||
+ | この症状は、FK9では特有の症状で、ピストンの熱によって焼き付き寸前の状態なのだ。~ | ||
+ | が、現在のドライバーは岩崎。~ | ||
+ | 彼は、このFK9の悪魔の喘ぎを知らない。燃料が上がってきていないと思っているのだろう。~ | ||
+ | このまま走らせても症状は改善しないし、悪い結果もあり得る。~ | ||
+ | 走行時間は若干短いが、ピットインさせドライバー交代をすることにする。~ | ||
+ | 第3スティント担当の私は、急いで準備をはじめ、それ以外の可能性も考えてみる。~ | ||
+ | ピットインしてきた岩崎は「加速ポイントで燃料が来ないような失速がある」という。~ | ||
+ | ビンゴだった。~ | ||
+ | キャブのLoはいじらずに、そのままコースインした。 | ||
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+ | 既に、回転はかなり落ちてきている。~ | ||
+ | エンジンにダメージを負っているかも知れないが、それは確認のしようがない。~ | ||
+ | 走りながら、吸気口の向きを変え、Hiニードルを合わせていく。~ | ||
+ | リッチにするポイント、リーンにするポイント。~ | ||
+ | どうやら、このままで行けそうだ。。。と思ったときに、マシンの挙動が急におかしくなる。 | ||
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+ | 実は、乗り込んでからすぐになんとなくおかしな感じをもっていた。~ | ||
+ | どこのコーナーでも、いつも挙動が違っている。~ | ||
+ | しかし、キャブセットのことを考えていたので、あまり大して気にしていなかったのである。~ | ||
+ | セットを終了して、さぁ、ここからと9コーナーで少し内側を走ったときに~ | ||
+ | 「ガリガリ」とシートが鳴ると同時に、お尻に嫌な感触。~ | ||
+ | なんと、シートのトラブルが起こったようなのである。~ | ||
+ | ところがこれが乗っている状態では、確かめようがない。~ | ||
+ | 底面が割れているかどうかなど手をあてるわけにもいかない。~ | ||
+ | リアステーがあることは確認できたが、効いているかどうかは判らない。~ | ||
+ | とりあえず、ピットに手振りで伝えようとするが、彼らにしても~ | ||
+ | まさかシートのトラブルだとは思わないだろうから、伝わらない。~ | ||
+ | 仮に伝わったとしても、対策は取れないかも知れない。~ | ||
+ | タンク寄りに座り、体を固定できない状態で、数周走行を続ける。~ | ||
+ | ステアリングにしがみついている状態である。~ | ||
+ | が、我慢できずにピットイン。~ | ||
+ | 急いで、大声で「シートのトラブルだ」といいマシンから離れるが~ | ||
+ | 上から見た状態では何も異常がない。~ | ||
+ | 一瞬、自分のドライバーとしての感覚を疑い頭の中が真っ白になる。~ | ||
+ | そんなはずはない・・・と思いながら、シートに手をやると前のボルトが動く。~ | ||
+ | なんてことだ。。。シートのボルトがフレーム側の穴に入っていなかったのである。 | ||
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+ | 裏からのぞき込み、修復を始めるが、路面に当たったボルトはなかなかナットに咬まない。~ | ||
+ | ゴムブッシュが一部欠けている。~ | ||
+ | そうか、これがフレーム側の金属部分とシート自体をタダ単に「挟んでいた」だけだったのだ。 | ||
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+ | 去年までの車検では、かならず台車に乗せた状態で下からも覗いていた。~ | ||
+ | しかし、今回はピットロードで上からだけのチェックだった。~ | ||
+ | 予選後に、ウェイト交換をすれば当然シートも外すから気が付いた。~ | ||
+ | そんなことを悔しく思いながら、なんとかナットを咬ませてコースに戻る。~ | ||
+ | マシンの挙動は安定し、タイムが戻る。 | ||
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+ | 走りながら、情けなくなってきた。~ | ||
+ | こんな初歩のミスと、データの読み違い。~ | ||
+ | ピットサインで戻ったが、落ち込んだ気持ちは体を重くしていた。 | ||
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+ | 実際のところ、そのあとのスティントでは、もうどうにもならない状態になっていた。~ | ||
+ | トップ3台とのラップ差は、1周あたり2秒以上。~ | ||
+ | 4位の単独走行中。5位はこちらもラップタイムで開きがある。~ | ||
+ | とにかく、何かが起きない限り、この順位の変動はあり得ないのだ。~ | ||
+ | チーム監督は、それでも私に何かを期待している。~ | ||
+ | どうにもならない、、とは言えないのだが。 | ||
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+ | エンジンにもダメージがあるだろう。~ | ||
+ | 最後のスティントにどんな気持ちで走り出せばいいのだろうか?~ | ||
+ | 6時間40分の段階で、前走者の岩崎がマシンに乗り込んだ。~ | ||
+ | つまり、私の仕事はチェッカーへの少ない走行時間だけである。~ | ||
+ | マシンの状態は、ドライ状態でトップ3台から5秒落ちまで来ていた。 | ||
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+ | しかし、真っ暗になったコース上に、異変が出てきた。~ | ||
+ | なんと予報通りの雨が降ってきたのである。~ | ||
+ | この雨が、どれだけ降るのか?~ | ||
+ | 残りの時間はまだ1時間以上有る。1スティントは55分。~ | ||
+ | 岩崎のタイムはどうか?残りの数分をどうするか? | ||
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+ | いきなりの展開だが、ピットの連中はベテラン。~ | ||
+ | すかさずインパクトドライバーと、タイアエアのチェックを始める。~ | ||
+ | 私は、ノイズボックスの雨カバーと、ガムテープ、オイルスプレー。~ | ||
+ | 全て防水のためだ。~ | ||
+ | 残り55分まで引っ張って、岩崎をピットインさせる。雨は本降りのようだ。~ | ||
+ | 左リアタイアを担当し、雨カバー・スイッチ防水をすませる。~ | ||
+ | が、フロントタイアで手間取っている。2リッター給油してもフロントタイア待ち。~ | ||
+ | しかし、全体でのピットストップではかなり早くコースインできた。 | ||
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+ | 自分のスティントで雨が降ってくるなんて、これは最後のチャンスだ。~ | ||
+ | が、同時にプレッシャーもかかっている。~ | ||
+ | 尊師杉山に「雨ライン覚えている?」聞かれる。~ | ||
+ | 大丈夫だと答えたが、本心ではない。~ | ||
+ | 古いタイアだったことを忘れて10コーナーに進入。スピンをする。~ | ||
+ | すぐに戻るが、2〜3周はタイアのグリップがない。~ | ||
+ | マシンの感触を確かめながら、4周目からアタックし始める。~ | ||
+ | ふと気が付くと、なんととんでもないタイムで走っていたのだ。~ | ||
+ | 13〜15秒台?トップが22秒台なのにである。~ | ||
+ | こちらは、立ち上がりもパワー感もなく、トップスピードもないマシン。~ | ||
+ | インフィールドだけで稼ぎ出しているタイムなのだ。 | ||
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+ | コース上で出会うマシンが、かなりのスピードダウンをしている。~ | ||
+ | その中で、1台の強敵に出会った。それまで3位を走行していた7号車である。~ | ||
+ | このマシンは、手こずる。~ | ||
+ | ストレートも立ち上がりもまだまだ力強いのだ。~ | ||
+ | 本当は邪魔をしたくないし、こちらのタイムも上がらなくなるので~ | ||
+ | 離れて走行したいのだが追いついてしまう。~ | ||
+ | しかも、インフィールドで追いつくので始末が悪い。~ | ||
+ | 特に、最終手前の14コーナーでかわすのだが、立ち上がりイン側で一気に抜かれる。~ | ||
+ | それを何度も繰り返したのだが、相手はピットインのタイミングだ。 | ||
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+ | トップのマシンにも、コース上で何度か出会う。~ | ||
+ | スピード差がありすぎる。~ | ||
+ | ドライで5秒遅れが、雨で7秒以上速く走れている。~ | ||
+ | この時ばかりは、誰ともなく感謝の気持ちでいっぱいになった。 |
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